


モーニング娘。

すっごいFEVER!/Wake-up Call~目覚めるとき~/Neverending Shine
M-01. すっごいFEVER!
作詞:つんく 作曲:つんく 編曲:平田祥一郎
M-03. Neverending Shine
作詞:つんく 作曲:つんく 編曲:神谷礼
■アーティスト:モーニング娘。'23
■発売日:2023/10/25
■コード:EPCE-7796
■レーベル:zetima
つんく♂コメント
「すっごいFEVER!」
ちょっと小難しい話をしますと、
レコーディングの機材の進化する時期ってのがありまして、
1960年後半にモノラル音声からステレオに発展し、
1980年半ばにはアナログテープからデジタルテープに進化しました。
僕の記憶では1982~3年くらいにコンパクトディスクが登場したので、
その辺りから急激に音質は良くなってるはず。
逆にいわば、その時代までの音源って
「ああ、モノラルだ」
とか「アナログテープの音だな」
というのは割とわかりやすいですが、
1980年も半ば以降の音源って、そこから40年たった
今でも大きく違うかといえば、大きく違わないように
思うんです。
もちろん細かくは違うんですがね。
まあ、いい。
そんなことはさておき、
今回のモーニング娘。のシングル曲は
とにかく「すっごい!」わけです。
この曲(歌詞も)を作ったのは数年前。
コロナ以前だったような・・・。
時の経つのは早い・・・。
当時、ある程度アレンジを進めてましたが、
途中で完全にストップしてました。
僕の中での仕上げの音は見えてたんですが、
歌うのってタイミングがあるんです。
そのタイミングが見えてない時、
そういう時は止めちゃうんです。
今回は譜久村卒業のメモリアルソングの一つになるわけだし、
やっぱかっこよく行きたいやん。
あ。あの曲だ!
ということで、この「すっごい!」曲のお出ましです!
そこから今回のシングル曲へと進化させるべく、
曲も歌詞もアレンジも2023年秋バージョンに
修正、変更し、仕上げてったわけです!
テーマは、
「新しいのに懐かしい。
よくよく聴くと奥深い。
でも、でも、一般的には楽しくって踊りたくなる。」
要は説明なんて不必要でノリノリになる!
それがポップスの醍醐味なんだと思ってます。
この曲には僕の作曲人生の集大成的な
「いろいろ」が詰まっています。
手応えというか、楽しかった〜。
作った時から男性ボイスのリフレインは
頭の中で鳴ってました。
まあ、本来なら僕でRECしたかったのかもしれません。
が、でも、とにかく低音の声がほしかったので、
今回はプッチモニの時の「わっはははっは〜」
や「OH BABY!」の低い声をやってくれた
アレンジャーでもある(この曲のアレンジャーではない)松原憲氏にお願いしました。
声ものの音源って基本的に大好きで、
ボニーMの「Daddy cool」とかアラベスクの「Peppermint Jack」
に出てくる声も好きだし、
その昔でいうとJohnny Cymbal の「MR. BASS MAN」
とか最高です!
で、それ以外にも大好きなHot Bloodの「Soul Dracula」
やマイケルジャクソンの「Thriller」の低音ボイス、
このあたりが最高です!
こういう曲たちをリスペクトしながら、
今回こだわったのは、生ブラスです。
あ、そういうことを書くと生ブラスのことだけに
着目されるから、それも違う。
ベースのフレーズもいかついし、
ギターのオクターブカッティングもいかついし、
単なる「つんく♂ファンク」だなんて言葉で解決させたくないほどの
僕の中のスマッシュソングです。
これ以上マニアックなフレーズを入れると通好みすぎてしまうし、
これ以上簡単だと、「ディスコ」とか「ユーロビート」
みたいな言葉で片付けられてしまう。
それも違う。
間奏明けの落ちサビのコード展開は
アレンジャーの平田祥一郎が考えてくれたんやけど、
泣きそうになるほどの浮遊する感じのこの展開。
羽があったら、完全に空を飛んでます。
この落ちサビの「Uh」で伸ばした2小節は
一回仕上げたあとで、どうしても足したくなって足したので、
譜久村に最後の最後に歌い直してもらってます。
ちなみに、8月の時点でリリース日が決まってましたが、
おそらく「社内向け資料」にはすでに楽曲タイトルが「Fever Whenever 上等」
で記載され進んでいました。
しかし、僕の頭の中で鳴ってた低音ボイスの「すっごい〜!』を入れたあとに、
あかん、タイトル変えなきゃ!
って思ったんです。
そもそものタイトルも気に入ってたんですが、
「なんて読みますか?」とか
カタカナで書く場合「ウエネバーですか?」「フェネバーにしますか?」
など、細かい問題が多く、
うむむ〜
って思ってたのもあったし、
そもそも過去を振り返っても、
「ヒット曲にはそんな苦労はない。もっとシンプルにしなきゃ」
って思い出して・・・。
そう思い出すと、ずっと「タイトルどうしよ」
「もう正式に社内向け資料に歌詞とタイトルを提出してるし、みんな面倒だろうな」
って思いながらも、「いや〜でも、覚えられないのはあかんよな」
って我慢できなくなって、変えてもらいました。
みなさま〜ご協力ありがとうございます!
メンバーもきっと驚かせてしまったと思います。
だって、この低音ボイスの入った音源が届いたのは
MV撮影の当日だったからね。
まあ、僕的にもいつもならダンスはこう進んでます、
とか、MV はこんなコンテです!みたいなのがくるので、
工程が見えるんですが、今回は全然聞いてなかったので、
気がついたらMV当日だったようです。
と、まあ、曲のこと語ると止まらないので、一旦歌詞の話に進みます。
僕たちプロの仕事って、「難し」そうなことを「簡単」に感じさせたり、
「当たり前」のことを「気難しく」表現したり。
それがプロってやつです。
今回の歌詞はどうですか?
今回の曲は当たり前のことをノリノリにして、
意味を感じさせない作戦です(笑)。
言ってることは、ある種普遍的なことで、
それがリズムに乗ることによって、
意味が入ってこないようにしてある。
で、カラオケ等で、ゆっくり歌詞を振り返って、
「へ〜」って思ってもらうってやつです。
貴重な青春時代をモーニング娘。として過ごしてくれる
彼女たちには、いつもリスペクトしかないんですが、
とにかく楽しんで、とにかく輝いてほしい。
僕から彼女たちに思うことは、それが一番です。
「Neverending Shine」
俺が譜久村なら、
自分が歌ってるモーニング娘。を最前席で観たいって思うだろう。
そこから
「僕がもう一人いたら」
という歌詞に辿りついてます。
人称が「僕」になってるのは、
譜久村が歌う分「私」で歌うより
「僕」の方が、より「パブリック」な立ち位置に感じる気がしたからです。
「僕」や「私」で、
アイデンティティを決めるような時代ではないのかもしれませんが、
それでも日本語にそれがあるなら、使い分けさせていただきます。
卒業ナンバーだからミディアムがいいとか、
バラードがいいとか、ノリノリの方がいいとか、
いろんな希望もあるかとは思いますが、
この曲を書き上げて、歌詞を書く時に、
「譜久村が歌う以外にどうするんだよ、この曲は!」
って、そう感じてならなかったんです。
いろんな曲を作ってきたけど、
初期のモーニング娘。のような密な時間の過ごし方ではなかったけど、
今までにいないハロー!プロジェクトメンバーで。
ハロー!プロジェクトやモーニング娘。のメンバー期間以上に、
つんく♂楽曲を「聴いて」「歌って」をしてくれてたのもよくわかるし、
この曲に辿り着けてよかったなって、僕は勝手に思ってます。
実はこの曲のレコーディング。
譜久村的にもきっと思い入れも強いだろうし、
誰でも、いい感じに歌いたくなるわけです。
これって、僕がいつも言うし、思う、
一番むずい状態なんです。
僕も当時、「シングルベッド」とか歌う時って
気合いも入るし、歌上手いって思われたいし、
感動もさせたいし、いろんな思いが重なって
イキってしまいます。
とくに曲がヒットしてから、地方の公演で歌う時なんて、
誰もが「待ってました!」ってなるので、
こっちも「答えなきゃ!」ってなるわけです。
でも、そういう時の歌って、
なんだか「あれあれ?」ってなったり、
後からビデオ観たら「俺、何イキってんねん!」
ってな恥ずかしい感じになってたり(現場は盛り上がってたりもするけど)
思ってる以上に上手く行きません。
「無」になりなさい
なんてカッコいい指導をする人もいるかもやけど、
滝行3年とかやった人間でもないし、そんなん無理です。
芝居も同じ。
自然な芝居ってなんだろうって思うわけです。
今回の譜久村の歌唱ですが、そりゃ〜どんだけ自然にすごそうって
思っても、曲を受け取ってからいろんな想いが巡ったと思うんです、頭の中を。
きっと無意識の中での「緊張」「圧」「欲」「夢」「愛」などなど
いろんなものが積み重なってレコーディングにのぞんだと思うんです。
デイレクター曰く、
当日、ブースに入ってしばらくは譜久村の「素晴らしい個性の何か」が
声として出しきれず、地団駄を踏んでいるようなレコーディングが続きました。
簡単に言葉にするとそれだけで全てを意味することは出来ないけど、
おそらく「艶」が乗りきっていないままレコーディングがすすんだんだと思います。
このままでは、ここまでの良い部分を繋ぎ合わせないと完成しないかもな〜。
そう思っていたようです。
この日も、この曲の1コーラス目から順番に箇所箇所でレコーディングを進めてます。
で、この曲には、間奏が終わった後に、少々静かな場面があるんですが、
この箇所のレコーディングに突入した瞬間から彼女の声が急に変わったようです。
おそらくゾーンに入ったというか、あのバックトラックの
空間に吸い込まれ、それまで譜久村が募り募らせた想いと重なり、
急に歌が「艶」とともに舞い始めたんだと思います。
それはレコーディングされた声を聴き比べれば明らかでした。
そこまであれほど苦労して
箇所箇所レコーディングをしてきたのに、
そこからは全体をほんの数回、歌って終了。
「これやん!」
そう思いました。
人間って欲深くって、わがままですね(笑)。
不思議です。でも、それが人間です。
歌詞の話を少し。
僕的には珍しく、詩的な部分を作ってみましたが、
譜久村の卒業でなければ、書かないだろうな〜というような表現です。
普通は歌詞を歌詞っぽく書くとリアリティーがなくなるんですが、
なぜかこのシングルで譜久村が歌うとなると
響いてくるんですよね〜。
離れたくない
近くにいたい
近すぎると見えない
太陽より熱く
星より綺麗
に、君を愛す
このフレーズは出て来ないよ〜。
当たり前すぎて。
でも、それがポエムなんだよね〜。
って、珍しく語ってしまいました。
これも譜久村ラストシングルってことだからこそ、
響くフレーズの連打。
で、曲の最後はメンバーみんなが出てきて
クロスして歌う。
なんと美しい・・・
卒業を派手にすればするほど、
「祭りの後」になるので、こういうセレモニーは出来るだけ自然がいいんですが、
メンバーともファンのみなさまともいい意味で
この曲で心をシェア出来ればって思う分、いつもと違う感動をお届けしたように思います。
ありがとう!
P.S. アレンジは神谷礼氏。
ピアノの世界観は聴いた感じでどなたにも伝わると思いますが、
彼の美しいのは、アレンジとアレンジの楽器の間にいっぱい空間があって、
この空間が宇宙空間のようで、この曲にピッタリハマったんだな
ってそう思います。
つい埋めたくなるからね。
これからもたくさんタッグが組めること、楽しみにしています!
ちょっと小難しい話をしますと、
レコーディングの機材の進化する時期ってのがありまして、
1960年後半にモノラル音声からステレオに発展し、
1980年半ばにはアナログテープからデジタルテープに進化しました。
僕の記憶では1982~3年くらいにコンパクトディスクが登場したので、
その辺りから急激に音質は良くなってるはず。
逆にいわば、その時代までの音源って
「ああ、モノラルだ」
とか「アナログテープの音だな」
というのは割とわかりやすいですが、
1980年も半ば以降の音源って、そこから40年たった
今でも大きく違うかといえば、大きく違わないように
思うんです。
もちろん細かくは違うんですがね。
まあ、いい。
そんなことはさておき、
今回のモーニング娘。のシングル曲は
とにかく「すっごい!」わけです。
この曲(歌詞も)を作ったのは数年前。
コロナ以前だったような・・・。
時の経つのは早い・・・。
当時、ある程度アレンジを進めてましたが、
途中で完全にストップしてました。
僕の中での仕上げの音は見えてたんですが、
歌うのってタイミングがあるんです。
そのタイミングが見えてない時、
そういう時は止めちゃうんです。
今回は譜久村卒業のメモリアルソングの一つになるわけだし、
やっぱかっこよく行きたいやん。
あ。あの曲だ!
ということで、この「すっごい!」曲のお出ましです!
そこから今回のシングル曲へと進化させるべく、
曲も歌詞もアレンジも2023年秋バージョンに
修正、変更し、仕上げてったわけです!
テーマは、
「新しいのに懐かしい。
よくよく聴くと奥深い。
でも、でも、一般的には楽しくって踊りたくなる。」
要は説明なんて不必要でノリノリになる!
それがポップスの醍醐味なんだと思ってます。
この曲には僕の作曲人生の集大成的な
「いろいろ」が詰まっています。
手応えというか、楽しかった〜。
作った時から男性ボイスのリフレインは
頭の中で鳴ってました。
まあ、本来なら僕でRECしたかったのかもしれません。
が、でも、とにかく低音の声がほしかったので、
今回はプッチモニの時の「わっはははっは〜」
や「OH BABY!」の低い声をやってくれた
アレンジャーでもある(この曲のアレンジャーではない)松原憲氏にお願いしました。
声ものの音源って基本的に大好きで、
ボニーMの「Daddy cool」とかアラベスクの「Peppermint Jack」
に出てくる声も好きだし、
その昔でいうとJohnny Cymbal の「MR. BASS MAN」
とか最高です!
で、それ以外にも大好きなHot Bloodの「Soul Dracula」
やマイケルジャクソンの「Thriller」の低音ボイス、
このあたりが最高です!
こういう曲たちをリスペクトしながら、
今回こだわったのは、生ブラスです。
あ、そういうことを書くと生ブラスのことだけに
着目されるから、それも違う。
ベースのフレーズもいかついし、
ギターのオクターブカッティングもいかついし、
単なる「つんく♂ファンク」だなんて言葉で解決させたくないほどの
僕の中のスマッシュソングです。
これ以上マニアックなフレーズを入れると通好みすぎてしまうし、
これ以上簡単だと、「ディスコ」とか「ユーロビート」
みたいな言葉で片付けられてしまう。
それも違う。
間奏明けの落ちサビのコード展開は
アレンジャーの平田祥一郎が考えてくれたんやけど、
泣きそうになるほどの浮遊する感じのこの展開。
羽があったら、完全に空を飛んでます。
この落ちサビの「Uh」で伸ばした2小節は
一回仕上げたあとで、どうしても足したくなって足したので、
譜久村に最後の最後に歌い直してもらってます。
ちなみに、8月の時点でリリース日が決まってましたが、
おそらく「社内向け資料」にはすでに楽曲タイトルが「Fever Whenever 上等」
で記載され進んでいました。
しかし、僕の頭の中で鳴ってた低音ボイスの「すっごい〜!』を入れたあとに、
あかん、タイトル変えなきゃ!
って思ったんです。
そもそものタイトルも気に入ってたんですが、
「なんて読みますか?」とか
カタカナで書く場合「ウエネバーですか?」「フェネバーにしますか?」
など、細かい問題が多く、
うむむ〜
って思ってたのもあったし、
そもそも過去を振り返っても、
「ヒット曲にはそんな苦労はない。もっとシンプルにしなきゃ」
って思い出して・・・。
そう思い出すと、ずっと「タイトルどうしよ」
「もう正式に社内向け資料に歌詞とタイトルを提出してるし、みんな面倒だろうな」
って思いながらも、「いや〜でも、覚えられないのはあかんよな」
って我慢できなくなって、変えてもらいました。
みなさま〜ご協力ありがとうございます!
メンバーもきっと驚かせてしまったと思います。
だって、この低音ボイスの入った音源が届いたのは
MV撮影の当日だったからね。
まあ、僕的にもいつもならダンスはこう進んでます、
とか、MV はこんなコンテです!みたいなのがくるので、
工程が見えるんですが、今回は全然聞いてなかったので、
気がついたらMV当日だったようです。
と、まあ、曲のこと語ると止まらないので、一旦歌詞の話に進みます。
僕たちプロの仕事って、「難し」そうなことを「簡単」に感じさせたり、
「当たり前」のことを「気難しく」表現したり。
それがプロってやつです。
今回の歌詞はどうですか?
今回の曲は当たり前のことをノリノリにして、
意味を感じさせない作戦です(笑)。
言ってることは、ある種普遍的なことで、
それがリズムに乗ることによって、
意味が入ってこないようにしてある。
で、カラオケ等で、ゆっくり歌詞を振り返って、
「へ〜」って思ってもらうってやつです。
貴重な青春時代をモーニング娘。として過ごしてくれる
彼女たちには、いつもリスペクトしかないんですが、
とにかく楽しんで、とにかく輝いてほしい。
僕から彼女たちに思うことは、それが一番です。
「Neverending Shine」
俺が譜久村なら、
自分が歌ってるモーニング娘。を最前席で観たいって思うだろう。
そこから
「僕がもう一人いたら」
という歌詞に辿りついてます。
人称が「僕」になってるのは、
譜久村が歌う分「私」で歌うより
「僕」の方が、より「パブリック」な立ち位置に感じる気がしたからです。
「僕」や「私」で、
アイデンティティを決めるような時代ではないのかもしれませんが、
それでも日本語にそれがあるなら、使い分けさせていただきます。
卒業ナンバーだからミディアムがいいとか、
バラードがいいとか、ノリノリの方がいいとか、
いろんな希望もあるかとは思いますが、
この曲を書き上げて、歌詞を書く時に、
「譜久村が歌う以外にどうするんだよ、この曲は!」
って、そう感じてならなかったんです。
いろんな曲を作ってきたけど、
初期のモーニング娘。のような密な時間の過ごし方ではなかったけど、
今までにいないハロー!プロジェクトメンバーで。
ハロー!プロジェクトやモーニング娘。のメンバー期間以上に、
つんく♂楽曲を「聴いて」「歌って」をしてくれてたのもよくわかるし、
この曲に辿り着けてよかったなって、僕は勝手に思ってます。
実はこの曲のレコーディング。
譜久村的にもきっと思い入れも強いだろうし、
誰でも、いい感じに歌いたくなるわけです。
これって、僕がいつも言うし、思う、
一番むずい状態なんです。
僕も当時、「シングルベッド」とか歌う時って
気合いも入るし、歌上手いって思われたいし、
感動もさせたいし、いろんな思いが重なって
イキってしまいます。
とくに曲がヒットしてから、地方の公演で歌う時なんて、
誰もが「待ってました!」ってなるので、
こっちも「答えなきゃ!」ってなるわけです。
でも、そういう時の歌って、
なんだか「あれあれ?」ってなったり、
後からビデオ観たら「俺、何イキってんねん!」
ってな恥ずかしい感じになってたり(現場は盛り上がってたりもするけど)
思ってる以上に上手く行きません。
「無」になりなさい
なんてカッコいい指導をする人もいるかもやけど、
滝行3年とかやった人間でもないし、そんなん無理です。
芝居も同じ。
自然な芝居ってなんだろうって思うわけです。
今回の譜久村の歌唱ですが、そりゃ〜どんだけ自然にすごそうって
思っても、曲を受け取ってからいろんな想いが巡ったと思うんです、頭の中を。
きっと無意識の中での「緊張」「圧」「欲」「夢」「愛」などなど
いろんなものが積み重なってレコーディングにのぞんだと思うんです。
デイレクター曰く、
当日、ブースに入ってしばらくは譜久村の「素晴らしい個性の何か」が
声として出しきれず、地団駄を踏んでいるようなレコーディングが続きました。
簡単に言葉にするとそれだけで全てを意味することは出来ないけど、
おそらく「艶」が乗りきっていないままレコーディングがすすんだんだと思います。
このままでは、ここまでの良い部分を繋ぎ合わせないと完成しないかもな〜。
そう思っていたようです。
この日も、この曲の1コーラス目から順番に箇所箇所でレコーディングを進めてます。
で、この曲には、間奏が終わった後に、少々静かな場面があるんですが、
この箇所のレコーディングに突入した瞬間から彼女の声が急に変わったようです。
おそらくゾーンに入ったというか、あのバックトラックの
空間に吸い込まれ、それまで譜久村が募り募らせた想いと重なり、
急に歌が「艶」とともに舞い始めたんだと思います。
それはレコーディングされた声を聴き比べれば明らかでした。
そこまであれほど苦労して
箇所箇所レコーディングをしてきたのに、
そこからは全体をほんの数回、歌って終了。
「これやん!」
そう思いました。
人間って欲深くって、わがままですね(笑)。
不思議です。でも、それが人間です。
歌詞の話を少し。
僕的には珍しく、詩的な部分を作ってみましたが、
譜久村の卒業でなければ、書かないだろうな〜というような表現です。
普通は歌詞を歌詞っぽく書くとリアリティーがなくなるんですが、
なぜかこのシングルで譜久村が歌うとなると
響いてくるんですよね〜。
離れたくない
近くにいたい
近すぎると見えない
太陽より熱く
星より綺麗
に、君を愛す
このフレーズは出て来ないよ〜。
当たり前すぎて。
でも、それがポエムなんだよね〜。
って、珍しく語ってしまいました。
これも譜久村ラストシングルってことだからこそ、
響くフレーズの連打。
で、曲の最後はメンバーみんなが出てきて
クロスして歌う。
なんと美しい・・・
卒業を派手にすればするほど、
「祭りの後」になるので、こういうセレモニーは出来るだけ自然がいいんですが、
メンバーともファンのみなさまともいい意味で
この曲で心をシェア出来ればって思う分、いつもと違う感動をお届けしたように思います。
ありがとう!
P.S. アレンジは神谷礼氏。
ピアノの世界観は聴いた感じでどなたにも伝わると思いますが、
彼の美しいのは、アレンジとアレンジの楽器の間にいっぱい空間があって、
この空間が宇宙空間のようで、この曲にピッタリハマったんだな
ってそう思います。
つい埋めたくなるからね。
これからもたくさんタッグが組めること、楽しみにしています!